生活習慣病について
生活習慣病とは運動不足、暴飲暴食、ストレス、喫煙、肥満などが健康に悪い生活を続けることが原因で発症する病気の総称です。
近年は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、自宅で過ごす時間が増えたために若者も生活習慣が乱れ、生活習慣病を発症する方が多くなりました。
高血圧症
日本人は高血圧になりやすく、日本人の4人に1人、60歳以上の方は約半数が高血圧症とされています。日本人に多い疾患の一つに脳卒中、脳出血がありますが、このような脳血管疾患は高血圧が原因の一つとして考えられております。高血圧が原因で起こる他の疾患としては、慢心認知症や腎不全、パーキンソン病などのQOL(生活の質)を低下させるものや、大動脈破裂や急性大動脈解離、心不全や心筋梗塞などの重篤な疾患などがあります。高血圧は基本的には自覚症状がなく、ほとんどの場合は定期健診で高血圧症を指摘されて発見されることがほとんどです。
他にむくみや息切れ、不整脈、動悸といった症状があらわれて受診したところ、発見されることもあります。
高血圧症の原因
高血圧症の原因としては、95%が遺伝、塩分過多、喫煙、ストレス、肥満などの生活習慣の乱れとされており、特に塩分の過剰摂取は最も治療に取り組みやすいものです。
減塩による治療を継続することで、降圧薬などを使用しなくても血圧のコントロールができる患者様もいらっしゃいます。
高血圧の原因の残り5%は腫瘍性の稀な疾患、ホルモン異常が関係しているとされており、生活習慣が整っている方でも発症するので、もしこれが原因の場合は血圧のコントロールと並行して原因に合った検査と治療を行う必要があります。
生活習慣は日々のちょっとした悪習慣が積もり重なって起こるもので、早い方であれば10代の頃から、もしくは20~30代の若い方にもよく見られるようになっています。
生活習慣の乱れは加齢が一つ重要な要素にはなってきますが、若い方でも「若いから心配することはない」と考えるのではなく、しっかり日々の管理をすることが重要です。
特に塩分管理は重要で、日本高血圧学会で推奨されている塩分摂取量は1日6g未満で、世界保健機関であるWHOでは1日5g未満となっています。
高血圧治療
日本高血圧学会のガイドラインによる高血圧の治療を開始する血圧の基準値
- 診察室血圧で140/90㎜Hg
- 家庭血圧で135/85㎜Hg
日本高血圧学会のガイドラインによる降圧目標値
- 75歳未満の成人 130/80㎜Hg未満(家庭血圧125/75㎜Hg未満)
- 糖尿病合併 130/80㎜Hg未満(家庭血圧125/75㎜Hg未満)
- 慢性腎臓病(蛋白尿陽性) 130/80㎜Hg未満(家庭血圧125/75㎜Hg未満)
- 75歳以上 140/90㎜Hg未満(家庭血圧135/85㎜Hg未満)
※血圧は日常生活における様々なものから影響を受け、例えば運動や食事、ストレス、環境の変化などが挙げられます。そのため、血圧測定ではリラックスできる自宅で測るより、病院で測った方が緊張してしまい高くなることが多いです。
家庭血圧の重要性
家庭血圧の測定も適切なタイミングがあり、血圧測定日本高血圧学会では朝起きたタイミングと就寝前の1日2回座って行うことで数値が正常に測定できるとされています(1日1回朝起きたタイミングでも可能です)。
測定前に事前にトイレを済ませるようにしてください。降圧剤を服用して治療を行う場合は1日の中で最も低血圧の数値を目安にしますが、これは高い数値を目安に治療を行ってしまうと、最も低い数値より低くなってしまう可能性があるためです。
降圧剤は1日の平均血圧の平均を下げることが目標なので、家庭血圧の数値を適切に管理するようにしましょう。
降圧剤
血圧を下げる降圧剤には複数種類がありますが、原則1種類の適切なお薬をガイドラインに則り処方し、少量から服用して頂きます。
これは急激に血圧を低下させてしまうと、身体に大きく負担がかかってしまうためです。血圧が徐々に下がってきたら、お薬の量を増やし、種類を追加して適切な値に血圧をコントロールしていきます。
服用の際の注意点として、血圧がしっかりコントロールできていると患者様自身の判断で服用を中止しないようにしてください。医師の指示に従って毎日服用するようにし、血圧が平均値に収まるように治療を継続するようにしましょう。
脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症は血液中の脂質が基準値を超えた状態を言います。通常、脂質は主に中性脂肪値コレステロールに分けられ、エネルギー源として使用され、細胞を構成する成分として重要な役割を担っています。しかし、脂質は過剰に増えてしまうと様々な疾患を引き起こす可能性があります。
一般的に脂質が増える原因としては、高脂肪食、高カロリー食を過剰摂取することや運動不足が原因で生じる疾患で、治療はまずは生活習慣の改善が必要です。
しかし、一般的に認知されていませんが、遺伝的な要素も関係しており、ご家族に脂質異常症の方がいらっしゃる場合は、生活習慣が規則正しい方、若く痩せている方などでも脂質異常症を発生するケースがあります。このような方でよくあるのが、初診で脂質異常症を指摘された場合に恥ずかしくて相談できない、自身は若くて生活習慣も規則正しいので大丈夫と治療せずに放置してしまうケースがあります。
脂質異常症は放置して悪化すると、動脈硬化が進行し、血管自体がもろくなり、血管の内側にプラークがついたり、血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなります。適切に治療をしないと、最終的に脳梗塞や急性心筋梗塞、認知症を発症するリスクがあります。
脂質異常症は毎日1種類のお薬を服用するのみで正常にコントロールできる病気です。定期健診などで脂質異常症を診断された場合は、自覚症状がない場合でも将来の健康を考えて早めに治療を行うことをお勧めします。
脂質異常の基準値
- 高LDL(悪玉)コレステロール血症 ≧140mg/dl(120~139 mg/dlは境界域)
- 低HDL(善玉)コレステロール血症 <40 mg/dl
- 高トリグリセライド(中性脂肪)血症 ≧150 mg/dl
脂質異常症の検査
頸動脈エコー
頸動脈エコーは動脈硬化の有無や進行度を確認できる検査で、脂質異常症の検査に有効です。検査では特殊なゼリーを首に塗ってブローブと呼ばれる機械を当てることでモニターに頸動脈の状態を映すことができます。ブローブを動かしながら医師が状態を確認しますが、患者様には負担がかからないので安心して検査を受けていただけます。
脂質異常症の治療
脂質異常症の治療は基本的に薬物療法と生活習慣の改善(食事療法・運動療法)が主な治療になります。脂質異常症はいくつか種類があるので、それによって治療方針は異なるため以下を参考にしていただければと思います。
高LDLコレステロール血症
高LDLコレステロール血症とは、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールが多い状態で、食事療法では1日の摂取カロリーを適正値に保てるようにバランスよく3食を摂取していただきます。
具体的には、肉類や卵はコレステロールが高いので控えて頂き、食物繊維が豊富な豆類やキノコ類、活性酵素が豊富なフルーツや野菜、DHA ・EPAが豊富な青魚をバランスよく摂るように心掛けてください。
高トリグリセライド血症
高トリグリセライド血症とは、魚・肉・油に含まれる脂質や体脂肪の大部分を占めるトリグリセライド(中性脂肪)が過剰に増えてしまっている疾患です。この値を低くするには、バランスの良い1日3食の食事と、30分以上の運動を週3回ほど行って頂きます。なお、栄養バランスが整っている食事でも暴飲暴食は厳禁で、腹八分程度に抑えるようにしてください。
低HDLコレステロール血症
低HDLコレステロール血症とは、善玉コレステロールの値が低くなっている状態で、治療はこの値を正常値に戻すことが目標になります。HDLコレステロールが低いと動脈硬化が起こりやすく、冠動脈疾患の危険が高まります。食生活や、禁煙、運動などの生活習慣の改善が必要です。
脂質異常症の治療薬
脂質異常症が軽度の場合や生活習慣の乱れが原因で発症している場合は、食事療法と運動療法による生活習慣の改善を行っていただきます。それでも改善が見込まれない場合に薬物療法を行っていきます。
ただし、発見当初から脂質の値が高かい場合や、遺伝が原因で発症していると判断された場合は薬物療法を最初から行います。
お薬は原則として毎日服用していただきますが、治療の効果はすぐには現れないので自己判断で中止してしまうことや、飲み忘れには注意しましょう。
高尿酸血症(痛風)
高尿酸血症とは血中の尿酸濃度が高くなってしまう疾患で、具体的には血中濃度が8㎎/dlが超えると診断されます。この状態が続くことで腎結石や尿管結石、痛風発作、腎機能障害、痛風結節などを引き起こす場合があります。男女比は10:1となっており、男性に多く見られる疾患となっています。尿酸はプリン体と呼ばれる成分が分解されてできたもので、8割は体内から、2割は食事から生成されます。そのため治療では、プリン体を多く含む食品を避ける食事療法や、尿酸値を下げるお薬を使用した薬物療法を行います。
痛風発作について
痛風発作とは、血中尿酸値が高い状態が続くことで関節に尿酸の結晶が溜まり、炎症を起こしてしまう症状です。結晶が溜まりやすい場所としては足の親指の付け根部分で、赤く腫れて激痛を伴います。
稀に手首や膝、足の甲に症状が出る場合もあります。時期も関係しており、夏場の暑い時期には脱水状態となり、それに伴って症状があらわれやすいので適度に水分を補給するようにしましょう。治療は薬物療法となり、消炎鎮痛薬を腫れと痛みが落ち着くまで服用し続けます。症状が改善された後は再発防止のために尿酸値を低下させるお薬を服用していただきます。
プリン体含有量の多い食品とお酒
プリン体が多く含まれる食品として魚介類や肉類、お酒などが挙げられ、具体的には白子、カツオ、エビ、イワシ、レバー、干し椎茸、干物、ビールなどが該当します。特に昨今の健康食品ブームから様々な食品が開発されていますが、ローヤルゼリー、クロレラ、DNA/RNA(核酸)、ビール酵母には多くのプリン体が含まれているため過剰摂取には注意しましょう。また、ビールや日本酒、ワインにはプリン体が多く含まれており、ウイスキーや焼酎などの蒸留酒の方がプリン体の含有量が少ないとされています。普段から飲酒習慣がある方は飲酒しない方に比べて、痛風発作を2倍引き起こしやすくなるとされています。飲酒は適量を守るようにしましょう。
男性は女性に比べて痛風になりやすいので、普段から食事習慣には気を付けるようにしてください。
高尿酸血症の治療
高尿酸血症の治療では運動療法や食事療法などで生活習慣を改善し、尿酸値を適正値に戻すことを目標にします。それでも改善が見られない場合には、薬物療法を並行して行います。
治療で注意すべき点として、尿酸値を急激に低下させてしまうと痛風発作を引き起こしやすいため、お薬の服用は3ヶ月ほどかけて徐々に値が下がるように調整しながら行っていきます。
生活習慣
高尿酸血症は生活習慣の改善が重要になります。特にBMIという「体重÷身長×2」で表される肥満指数が25以上になっている肥満体型の方は、痛風発作が起こりやすいとされており、ダイエットを行う必要があります。ただし、過度なダイエットは身体に負担がかかるため、医師に指示に従って行うようにしましょう。
また、水分補給を行って尿の排出量を増やすことも大切ですが、腎疾患や心疾患を患っている方は医師の指示にもとで水分量を調整するようにしてください。
食事
食事療法では1日のプリン体の摂取量をコントロールします。具体的には400mg未満に抑えることを目標に、プリン体を多く含むレバーなどの肉類・カツオや干物などの魚介類を摂り過ぎないようにしましょう。また、ビールや日本酒などのお酒もプリン体を多く含むため、ビールは500ml未満、日本酒は1合未満に抑えるようにしましょう。