潰瘍性大腸炎について
潰瘍性大腸炎は、消化管の慢性疾患である炎症性腸疾患の一つで、炎症性腸疾患にはクローン病も含まれます。潰瘍性大腸炎は大腸粘膜に炎症が起きる原因不明の慢性腸疾患で、ぴらんや潰瘍ができ、腹痛や血便、下痢、発熱、貧血などの症状を伴います。潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎は、根治が難しい疾患で、厚生労働省から難病指定されています。
明確な原因も現在のところ分かっていませんが、遺伝要因や環境要因が原因で免疫異常を起こして発症すると考えられています。
根治はできないものの、専門医による適切な治療を受けることで症状をコントロールし、発症前の日常生活を送れる状態には戻ることは可能で、ほとんどの場合は生命を脅かすような危険性はありません。
潰瘍性大腸炎の診断
潰瘍性大腸炎には診断基準が定められており、大腸カメラ検査によって粘膜の病変組織を採取して病理検査を行うことで確定診断が可能です。
腸炎などの他の大腸疾患でも似たような症状が起こることもあり、確定診断の際に寄生虫や細菌によって起こる腸炎でないか確認してから判断されます。
潰瘍性大腸炎の症状
潰瘍性大腸炎の主な症状として慢性的な痙攣性、または持続性の腹痛や下痢、血便が起こり、症状が悪化すると下痢の回数や血便量が増加して体重減少、貧血、発熱などの症状も伴います。
潰瘍性大腸炎の治療方法
根治はできないため、治療は炎症を抑えることで症状を緩和させ、寛解状態を維持することが目的になります。
治療は薬物療法が基本で、副腎皮質ステロイド薬や5‐アミノサリチル酸薬（5‐ASA）製剤などの内服薬を処方します。
この内服薬で十分に効果を得られない場合は、JAK阻害薬や抗TNFa受容体拮抗薬の導入を行い、それでも症状を抑えきれず、がんの発症やその可能性がある場合は、大腸の全摘手術を検討する必要があります。
潰瘍性大腸炎の医療費助成制度について
潰瘍性大腸炎は医療助成制度の対象疾患で、軽症患者でも一定以上の高額医療を受ける場合には公費による助成対象となります。
助成金を受給するには受給者証が必要で、この申請には指定医療機関が記入した臨床個人調査票を各市区町村の保健所窓口に提出する必要があります。
承認されると、申請日から受給者証交付までの期間分も遡って助成金を受給できます。
クローン病
クローン病は潰瘍性大腸炎と同じく、炎症性腸疾患の一つで厚生労働省より難病指定されています。
発症すると、口から肛門までのすべての消化管に線維化や潰瘍を伴う慢性肉芽腫性炎症性病変を生じ、患者数は増加傾向にあります。中でも若年層に多く見られる傾向があり、また男性の方が2:1の割合で羅患者数が多いです。
正確な原因は現在のところ、わかっていないですが、主な原因としては遺伝が関係していると考えられており、それに加えて腸内細菌に対する過剰な免疫反応や食事なども関係していると言われています。
クローン病の症状
多くの場合に腹痛や下痢が見られますが、病変がどの部位にあるのか（小腸型、大腸型、小腸・大腸型）、その程度によっても症状が異なります。
また、狭窄や瘻孔、膿瘍といった合併症を引き起こすこともあり、他にも虹彩炎や関節炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、肛門部病変、皮膚、目、肛門、関節にも合併症が発症することもあります。
特に肛門周囲の膿瘍や肛門病変からクローン病が診断される場合が多いです。
クローン病の診断基準
大腸カメラ検査での画像検査と、組織を採取して病理検査を行うことによって出た結果から、クローン病の診断基準にのっとり、総合的に確定診断を行います。
また、肛門病変の所見によってクローン病が診断されることもあります。
クローン病の治療方法
クローン病の治療方法は薬物療法や栄養療法などの内科治療と外科治療の2つがあり、根治はできないので、治療の目的は症状の緩和やQOL向上となります。
主に内科治療が優先され、穿孔や腸閉塞、膿瘍などの合併症が起こっている場合は外科治療を行うようにしています。近年では治療効果の高い抗TNFa受容体拮抗薬が適応となり、手術件数は減ってきています。
強い症状の場合は副腎皮質ステロイドや免疫調整薬、5‐アミノサリチル酸製薬などの内服薬を使用し、中でも免疫調整薬や5‐アミノサリチル酸製薬は再発防止リスク低減のために症状が緩和しても服用し続ける必要があります。
治療効果があまり見込めなかった場合は抗TNFa受容体拮抗薬を使用します。
栄養療法
栄養療法では、食事習慣の見直しを行い、症状の緩和と病変の改善を目指します。
治療内容は刺激の強い食べ物を控えて頂き、アミノ酸主体の無脂肪成分の栄養剤や少量のたんぱく質・脂肪分を含む消化態栄養剤で腸の働きを安定させます。
症状が落ち着いたタイミングで通常の食事に戻していただいて大丈夫ですが、食事によっては症状が再燃することもあるので、低脂肪で消化吸収されやすい食事をお勧めしております。また、小腸に病変や強い狭窄が確認できる場合は点滴治療を行うこともあります。
手術治療
穿孔・狭窄・膿瘍などの合併症が起こっている場合は外科治療を行います。膿瘍・穿孔には外科治療が行われ、症状が悪化して治療が難しい狭窄には内視鏡的拡張術が行われますが、切除する範囲は小さいものになります。
注意事項
クローン病は潰瘍性大腸炎と比較して、腸管壁の深層まで炎症が拡がるので、炎症が続くとダメージが蓄積され、様々な合併症を引き起こしやすくなります。
そのため、症状を落ち着かせることが治療の優先事項となります。
症状が落ち着いているように見えていても、実際は進行していることもあり、慎重な経過観察と継続的な治療が不可欠です。患者様ご自身でも日ごろから動物性たんぱく質が含まれる食べ物を避け、低脂肪で消化吸収されやすい食事を摂るようにしましょう。
