大腸ポリープ
大腸粘膜にできるイボのように隆起したものを大腸ポリープと総称します。大腸ポリープの中には腺腫、鋸歯状ポリープ、炎症性ポリープ、過誤腫性ポリープなどに分類されます。その中でも、腺腫や鋸歯状ポリープの一部は発育とともにがん化するリスクがあり、これを切除することで大腸がんを予防することが可能です。どのようなタイプのポリープであるかは大腸カメラ検査で詳細に観察することで診断可能です。
大腸ポリープの症状
小さいうちは症状はなく、自覚することは難しいですが、ポリープが大きくなってくると出血を伴うことがあり、血便などの症状があらわれます。そこからさらに大きくなっていくと便秘などの症状を伴うこともあります。
便潜血検査では検査時の便に出血があれば陽性になりますが、ポリープが小さい場合はほとんどが陰性となってしまいます。陰性であれば大腸ポリープの心配がないと判断できるわけではありません。
このように大腸ポリープはほとんど無症状であり、症状が出てからだとその治療負担も大きくなる可能性がありますので、早期からの定期的な検査でチェックしていくことが必要です。
大腸腺腫発見率 ADR(adenoma detection rate)について
大腸カメラ検査では、早期がんや腺腫の診断と切除により、大腸がんによる死亡率を減少させることができますが、この病変を見落としてしまうと、その後の大腸がんを防ぐことができません。
大腸カメラ検査の代表的な指標(Quality indicator)の一つとして、大腸腺腫発見率(ADR)があげられます。ADRとは、大腸カメラ検査においてどのくらいの確率で大腸腺腫を発見しているかという指標であり、この指標を高めることにより見落としの少ない質の高い検査の実現が可能になります。
このADRが1%上昇することで、その後の大腸がんを3%減少できるとされる可能性もあることが報告されており、非常に重要な指標であるといえます。
ただ、ADRは年齢や検査理由、腸管洗浄度などに影響を受けますので、それだけで精度そのものを表すわけではありません。
- 検査前の説明で、確実な腸管洗浄を行い
- 苦痛なく
- 大腸の奥まで(盲腸)確実に観察し
- 観察時間を長く(最低6分以上)
- 高ADRを維持
当院の大腸カメラ検査では、上記を常に意識し高精度の内視鏡検査を提供して参ります。
大腸カメラは
微小な大腸ポリープを発見できる
唯一の検査です
大腸CT検査やX線造影検査(注腸検査)でもこのポリープの存在を診断することは可能ですが、ポリープの種類までは判断できません。がん化するリスクのある切除が必要なポリープかどうかを診断できるのは、詳細に観察可能な大腸カメラ検査だけです。
また、当院ではより検査が正確に行えるように、最新の内視鏡システムを駆使して微小なポリープや病変でも発見できるよう対応しております。
ポリープが見つかった際はその場で切除できますので、切除のために再度大腸カメラ検査を受けていただく必要がなく、患者様の負担も抑えられます。切除した病変は病理検査を行い、大腸がんが含まれたポリープではないかどうか確定診断を行います。
病気の早期発見・早期治療で
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の維持
近年、大腸がん罹患数は増加しております。前がん病変である大腸ポリープや早期大腸がんは自覚症状に乏しく、症状を認めてからだと、すでに進行がんとなって発見されることがあります。進行した大腸がんの治療は、腹腔鏡下・ロボット手術によって以前よりは改善されたものの、身体への負担は内視鏡治療と比較すると大きく、治療後も抗がん剤治療が必要となったり、できた部位によっては人工肛門が必要となったりすることがあります。それによって高額の医療費や、生活やお仕事に支障をきたすなど、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の低下に繋がります。早期大腸がんや大腸ポリープは内視鏡で切除できるので、患者様のお身体への負担も小さく、治療後も基本的に生活の質の維持が可能です。そのため、定期的な検査による、早期発見・早期治療が非常に重要であると言えます。
40歳以上になったら、一度は大腸カメラ検査を受けることをお勧めします。
大腸ポリープ切除と方法
当院では大腸カメラ検査で、直接粘膜を詳細に観察するだけでなく、切除が必要なポリープが見つかった場合は、その場で切除することが可能です。患者様はポリープ切除のために再度検査をする必要もなく、検査前の食事制限や下剤の服用も1回で終わるので身体的負担や経済的負担が少なく済むと考えます。前がん病変であるポリープは切除せず放置していると将来がんになるリスクが高まるため、その場で切除することで将来的ながん予防にも繋がります。手術は入院の必要がなく、時間は5~10分程度で終わる簡単なものですが、稀に数や大きさ、形などにより合併症のリスクを考慮し、入院施設での治療をお奨めする場合もあります。その場合は、経験豊富で対応可能な高度医療機関を紹介いたします。
ホットポリペクトミー
ポリペクトミーはポリープ切除の手法で最も一般的なもので、高周波電流によってポリープを焼き切るものと電流を要さないコールドポリペクトミーがあります。高周波電流を要するものはスコープの先端のスネアというワイヤー状の器具をポリープに引っ掛け、高周波電流を流し切除を行います。
コールドポリペクトミー
上記のポリペクトミーと同様にスネアでポリープを切除しますが、この場合は通電を行いません。大きさや形状によって適応を判断しますが、高周波電流を要さないため、熱による腸管への負担が少なく、合併症のリスクが軽減できるメリットがあります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡的粘膜切除術とは、ポリープ直下の粘膜に生理食塩水を注入した後に、ポリープにスネアをかけ高周波電流でポリープを焼き切ります。平坦な場合など、スネアが引っ掛かりにくい時などに用いられます。生理水食塩を注入することで、熱が粘膜の下層部に伝わりにくいため、比較的安全に切除できます。
ポリープ切除後の注意点
稀ではありますが、切除後は出血や穿孔などの合併症のリスクがあるので、予防や早期回復できるように術後はいくつか患者様に守っていただく注意事項があります。具体的には数日~1週間程度は食事、移動、運動、入浴などに関して制限があります。そのため、検査日が決める際は出張や旅行などのスケジュールを考慮して決めるようにしてください。
ご帰宅後の過ごし方
当日は体を動かしたりせずに安静にして、早めに就寝するようにしてください。
入浴
当日はシャワーのみ可能となりますが、翌日から入浴は可能です。
食事
当日は刺激の強い香辛料や油分の多いものは控えるようにしてください。
飲酒
術後の診察で医師が許可を出すまでは飲酒は控えるようにしてください。
運動
腹筋に力を入れるような運動は1週間程度控えるようにしてください。それ以外の運動も患者様によって個人差がありますので、医師に確認するようにしてください。
旅行・出張
長時間運転や長距離移動は身体に負担がかかるため、1週間程度は控えるようにしてください。特に飛行機も気圧変化が激しいため、短時間のフライトでも禁止していただきます。また、遠方に移動することで万が一の場合の処置が遅れる可能性もあるのでご予定のある方は必ず事前に相談していください。