血便で受診される方は多くいらっしゃいます。やはり血便は出るとびっくりしますし、怖くなってしまうのも無理のないことと思います。血便にもさまざまな原因や注意すべき点がありますので、今回は血便の原因や対処法について解説します。
血便の原因
・痔
痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔):いわゆる痔です。拭いた紙にわずかに血が付着したり、排便後に便器にポタポタ出血が起こることが多くあります。排便時やあとに肛門の違和感や痛みを伴うこともあります。内痔核は、肛門の中にできるため、直接触れることができず、痛みを伴わないことも多いため、気づきにくい場合があります。
・感染性腸炎
血便の原因となり、よくみられる代表的な菌としては、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌が挙げられます。下痢とともに血便を伴います。
・炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病です。下痢とともに血便を生じることが多くあります。腹痛、発熱を伴うことも多くあります。
・大腸憩室出血
大腸にできた憩室(くぼみ)より血便を起こします。ときに多量の血便となり腹痛を伴わないことが多いです。
・虚血性腸炎
一時的な腸管の血流が悪くなることで、腹痛、下痢、血便を引き起こします。下行結腸〜S状結腸が好発部位で、左側腹部から左下腹部の強い痛みのあと下痢と血便を生じることが多くあります。
・大腸がん・大腸ポリープ
小さな大腸ポリープの状態では自覚する血便はほぼありまんが、サイズが大きくなるにつれ、粘液を伴う血便を生じることがあります。肛門より遠い右側結腸(上行結腸〜横行結腸)では出てくるまでに時間を要するため新鮮な血便として自覚しないことも多くあります。
対処法
・少量の場合
紙に血がつくや1-2回程度で少量であれば慌てる必要はありません。
便の状態を携帯などで写真をとり(診察時にみせると非常に参考になります)、水分をしっかり摂取し激しい運動や飲酒はさけなるべく早めに一度受診することをおすすめします。
・大量の場合
強い腹痛・血便いがつづく場合は注意が必要です。腹食事はとらずに水分程度にとどめ、安静にし医療機関を受診するようにしましょう。
・消化器専門医の受診
血便があった際は、大腸がんや炎症性腸疾患などがないかどうかをしっかりと確認することが重要ですので、一度専門医の受診をおすすめします。
診察では、問診や診察により、肛門鏡検査や検便検査(細菌検査)、血液検査(貧血の有無)、腹部CT検査や大腸カメラ検査など必要に応じて行います。また激しい下痢などをともなう場合では脱水の改善などの対症療法も必要となります。大量の出血の場合、入院治療や止血処置、輸血なども必要となることもあり注意が必要です。
上記のように血便は、痔等による軽度のものから入院治療が必要となるもの、大腸がんなどの悪性疾患まで原因はさまざまです。
これまで大腸がんの治療を多くあたってきましたが、“痔だと思っていて放置していた”などの理由で発見が遅れてしまっていたこともこれまでに多く経験しました。
出血自体は体からのサインであり、せっかく早期発見できる機会となる可能性があります。些細な出血でも一度専門医を受診し、必ず適切な検査を受けるようにしましょう。