“便潜血検査“
皆さん一度は聞いたことがあるけども、”よくわからない” “検診でひっかかったけど、どうしていいか分からない” “以前指摘されて病院を受診した”など様々だと思います。
その名前の通り、便の中に血液の成分を含んでいるかを調べる検査で、便潜血検査が陽性の場合、一番気をつけなくてはいけないのは、やはり“大腸がん”です。
便潜血検査による大腸がん検診によって、大腸がん死亡・罹患リスクを低下させることがわかっており、現在では全国の検診で広く用いられています。
大腸がんは、40歳から徐々に増加し始めることから、厚生労働省は40歳以上の健常者に、年に1回の便潜血検査による“大腸がん検診”を推奨しています。
現在は“免疫学的便潜血法 fecal immunochemical test ; FIT)”が用いられており、この方法では、食物による影響は受けず(肉類などの血液には反応しない)、以前の化学法よりも感度の高い検査となっています。
消化器診療クリニックである当院は、この便潜血検査が陽性となって受診される方が多く来院され、以下のような相談が多くあります。
“検診で便潜血陽性だったが、痔がもともとあるのでそのせいではないでしょうか?”
“もう1回便潜血検査を行ってみて、陰性だったら心配ないと思っていいでしょうか?”
上記のような質問があった際、私は消化器を専門とする医師として、必ず
“大腸カメラ検査”を受けるよう強くすすめています。
便潜血検査が陽性となった場合、以下の疾患の可能性を考える必要があります。
・大腸がん
・大腸ポリープ
・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)
・大腸憩室や感染性腸炎など
・肛門疾患(痔疾患や粘膜脱症候群など)
もちろん、先にあげた質問のように“痔”が原因である可能性もあるわけですが、
早期がんも含めた“大腸がん”であることを便潜血検査では否定することができません。
また、例え大腸がんであったとしても必ず便潜血検査が陽性となる訳ではないため、もう一度便潜血検査を受けて陰性を確認しても完全に安心することはできません。
大腸がんは、一部の大腸ポリープが大きくなることで“早期大腸がん”となり、それが時間とともに発育することで“進行大腸がん”となることが分かっています。
大腸カメラによって、この大腸ポリープの段階で切除治療を行うことで、今後の大腸がんの予防につながります。
また、大腸カメラによって、“早期大腸がん”の段階までに発見することができれば、多くは内視鏡による治療が可能ですし、
例え外科手術となっても根治性は高く、今まで通りの社会活動も継続できる可能性も高まります。
上記のように、
“大腸カメラ検査を受けた結果、痔が原因であった”ことと、
“痔だと思って大腸カメラ検査を受けなかった”場合では、
結果が大きく変わってきてしまうことがあるため、例え痔疾患をお持ちで長年悩んでいる方などであっても、当院では大腸カメラ検査を強くおすすめしています。
ただ、上記のような質問にはやはり、大腸カメラ検査への“恐怖心”“羞恥心”“時間的拘束”など、検査へのネガティブな心境が影響しているものと思われます。
そのような印象によって大腸がんを予防、または早期に治療できた患者さんが時期を逸することはどうにかして避けなければいけません。
そのためにも、そのような印象を少しずつでも払拭していけるよう、
苦痛のない大腸カメラ検査、羞恥心に十分配慮した診療、便利で安心な診療体制を整え、少しでも進行大腸がんで発見される方が減少するよう日々努めてまいりたいと思います。